とりあえずエストニア語には 14 格あるということを知っている人向けの記事です。日本語も義務教育の国語で学んだことに加えて日本語教育っぽい部分もありますが、基本的に参考文献の劣化版になるので詳しく知りたい方は一番下にある参考文献をお読みください。
エストニア語の格一覧
以下の表はエストニア語文法に出てきたものを引用しています。
「若い女」
| 名前 | 単数 | 複数 |
|---|---|---|
| 主格 | noor inimene | noore/d inimese/d |
| 属格 | noor inimese | noore/d inimes/te |
| 分格 | noor inimes/t | noore/d inimes/te |
| 入格 | noor inimese/sse | noore/d inimes/te/sse |
| 内格 | noor inimese/s | noore/d inimes/te/s |
| 出格 | noor inimese/st | noore/d inimes/te/st |
| 向格 | noor inimese/le | noore/d inimes/te/le |
| 接格 | noor inimese/l | noore/d inimes/te/l |
| 奪格 | noor inimese/lt | noore/d inimes/te/lt |
| 変格 | noor inimese/ks | noore/d inimes/te/ks |
| 様格 | noore inimese/na | noor/te inimes/te/na |
| 到格 | noore inimese/ni | noor/te inimes/te/ni |
| 欠格 | noore inimese/ta | noor/te inimes/te/ta |
| 共格 | noore inimese/ga | noor/te inimes/te/ga |
全部で 14 個の格!といいながらもほとんどが属格を基本に変化していくものがほとんどなので実際に覚えないといけないのは上の 6 個分ぐらい。 それでも格のない言語に比べて辛いことは間違いないけど文法姓もないので落ち着いて見てほしい。
日本語の格助詞
以下の表は日本語教育能力検定試験完全攻略ガイドから引用しています。
| 名前 | 主な働き | 例文 |
|---|---|---|
| ガ格 | ① 主体 ② 対象 | ① 学生が勉強する ② 寿司が食べたい |
| ヲ格 | ① 対象 ② 起点 ③ 通過点 | ① 田中さんはコーヒーを飲んだ ② 私は毎日 6 時に家を出る ③ 祖母が毎日近所を散歩する |
| ニ格 | ① 場所 ② 時 ③ 到達点 ④ 相手 ⑤ 目的 | ① 娘は沖縄に住んでいる ② 夜 9 時にバイトが終わる ③ 参加者が駅前に集合した |
| デ格 | ① 場所 ② 手段・方法 ③ 原因・理由 ④ 主体 | ① 子供が公園で遊んでいる ② 妻は夫を駅まで車で送った ③ 地震で電車が止まった ④ クラスみんなで歌う |
| ト格 | ① 共同動作の相手 ② 相互動作の相手 | ① 娘が母親とケーキを作る ② 私は弟と喧嘩した |
| ヘ格 | ① 方向 | ① 船が港へ向かった |
| カラ格 | ① 起点 ② 原料 | ① その居酒屋は 17 時から営業している ② 酒は米から作られる |
| ヨリ格 | ① 比較 ② 起点 | ① 姉より妹のほうが背が高い ② 未明より雪が降り始めた |
| マデ格 | ① 到達点 | ① 東京から大阪まで新幹線で二時間半かかる |
比べてみる
主格
- 「が(主体)」主語を表す
- Ma õpin eesti keelt. - わたしはエストニア語を勉強しています
- Ma olen jaapanlanna. - わたしは日本人(女性)です
- 「を(対象)」直接目的語を表す
- Nad ehitasid need majad. - 彼らはこれらの家を建てました
後述にもありますが、主格が目的語として使われるのは主に「命令形(肯定)」「複数形(肯定)」のときです。
属格
- 「の(連体格)」動作や状態の主体を表す Minu pere elab Jaapanis. (わたしの母は日本に住んでいます)
- 「を(対象)」直接目的語を表す
Ma toon raamatu. (わたしは本を持ってきます) - 後置詞と使う
Raamatu peal on sulepea. (本の上にペンがあります)
分格
- 「を」直接目的語を表す
Ma kuulan muusikat. (わたしは音楽を聞きます) - 数量詞と共に使う
Mul on neli last. (わたしは 4 人の子供がいます) - 存在文/所有文(否定または非個体)の主語を表す
Majas ei ole inimest. (家の中には人がいません) Mul on piima. (わたしは牛乳をもっていません)
ここまで 3 つの格が直接目的語を表すのに使われてきました。属格または分格のどちらかしか使えない動詞もありますが、どちらも取ることができる場合は否定や非個体名詞の場合に分格を使用します。ついでに目的語が複数のときや命令形のときに主格が使われたりします。個体名詞の場合でも分格目的語は進行形、属格は完了形のようなニュアンスの差がありますがエストニア人に聞いても説明できないことがあります。詳しくはエストニア語文法を参考にしてください。
対格フローチャートを作ったので載せておきます。
入格
- 「(~の中)に」到達点を表す(↔ 出格)
Tema läks teatrisse.(彼は劇場に行きました)
内格
- 「(~の中)で」場所を表す
Tema on teatris.(彼は劇場にいます)
出格
- 「(~の中)から」出発点を表す(↔ 入格)
Tema läks teatrisse.(彼は劇場に行きました) - 「から」材料を表す
Piimast võib saada kohupiima ja võid. (牛乳から凝乳やバターができます) - 「について」話題を表す
Kõik rääkivad uuest filmist. (全員が新しい映画について話しています) - 「(時間)から」時間の起点を表す(↔ 到格)
Alatest juunist on tema puhkusel (彼は 6 月から休暇です)
向格
- 「(~の上)へ」到達点を表す(↔ 奪格)
Millal ta läheb tööle? (彼はいつ仕事に行きますか) - 「へ」与格を表す(↔ 奪格)
Ma kingin sinule/sulle roose(これらの薔薇はあなたへプレゼントします)
接格
- 「(~の上)で」場所を表す
Tema on tööl (彼は仕事にいます) - 所有文の主語を表す
Meil on ilus korter (わたしたちは綺麗なアパートをもっています) - 使役、命令、許可、禁止などを表す
Ta lubas mul maale sõita. (彼はわたしが田舎へ行くのを許可しました) - 「(時間)に」時間の表現に使う
Loeng algab homikul (講義は朝始まります)
奪格
- 「(~の上)から」出発点を表す(↔ 向格)
Ma lähen töölt koju tagasi. (仕事から家に帰ります) - 「から」与え手を表す(↔ 向格)
Küsi seda temalt (それについては彼から聞いてください) - 「に関して」範囲を表す
Tema on rahvuselt eestlane (彼は民族に関していうとエストニア人です)
場所を表す入格・内格・出格と向格・接格・奪格は大体同じように対応しています。入格を使うのか向格を使うのか、内側か表面かで使い分けられることもありますが、基本的に単語(場所)によって-l なのか-s なのかが変わってきます。地名でも変わったり省略したりするので覚えないと推測はしづらいです。さらに厄介なことに入格と向格で意味が変わる単語(たとえば maal は「田舎で」だけれど maas は「地面で」となる)もあります。
変格
- 「に(変わる)」変化の結果を表す(↔ 出格)
Tema saab arstiks. (彼は医者になります)
出格を使うと Temast saab arst になる
- 「として」一時的な職務や機能を表す(↔ 様格)
See neiu on õpetajaks. (娘さんは一時的に教師をしています)
olema と共に用いる
「~とみなす」
Mõlemad pooled piodasid otsust õigeks. (双方が決定を正しいと考えました)「のために」用途や目的を表す
Mati õpib arstiks. (マッティは医者になるための勉強をしています)「の間」予定された期間を表す
Me jäime sinna kolmeks päevaks. (わたしたちはそこに 3 日間泊まりました)「までに」期限を表す
Selle töö me lõpetame õhtuks. (この仕事は夕方までに終えます)
様格
「として」職務や機能を表す
Ma töötan õpetajana. (わたしは教師として働いています)「のように」様子を表す
Suure tehase kõrval paistis maja väikesena. (大きな工場のそばなので家は小さく見えました)「にしては、としては」判断の基準を表す
See arst on inimesena väga sümpaatne. (この医者は人間として好感のもてる人です)
到格
- 「まで」空間的、時間的な終点を表す(↔ 出格)
Laps jookseb metsani. (子どもが林まで走っていきます)
Tallinnast Tartuni on 180 kilomeetrit. (タリンからタルトゥまで 180 キロです)
欠格
- 「~なしで」欠如している状態を表す(↔ 共格)
Ma joon teed ilma suhkruta. (砂糖なしでお茶を飲みます)
ilma と共に用いることが多い
共格
- 「で」手段を表す
Ma sõidan rongiga (列車で行きます) - 「と」付属や同伴を表す
Ma joon kohvi koos suhkruga. (砂糖とお茶を飲みます)
koos と共に用いることが多い 3. 「で、~うちに」一定の時間の範囲を表す
Ma lõpetasin tööd kolme tunniga. (わたしは 3 時間で仕事を終わらせました)
参考
- エストニア語文法(松村一登)
- 日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド(集英社)

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